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オフサイド・バックパッカーズ(15)

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メモを頼りにSバーンを乗り継ぎ、たどり着いたイラン領事館は、知らずに行けば通りすぎてしまうような普通の住宅街の中にあった。とはいえ、民家とは少し違う風情のコンクリート造りの建物の自動ドアをくぐると、受付カウンター前では、大勢の人が順番待ちの時間をつぶしている。

ペルシャ語の表記の下に申し訳程度の小さな文字でVISAと書かれたカウンターの、自動発券機で受け取った順番待ちの番号札は二桁の数字で、しばらく待つことを覚悟してソファーに身を沈める。ペルシャ語の喧噪がほど良い刺激となり少し早く起きた分だけ眠気を誘ってきた。

少しうつらうつらする中で、手持ちの番号札の数字を呼ばれたのは、午前受付の最後のひとりというような時間帯、カウンター越しに「テヘランまで行きたいのだけど・・・」と、パスポートを手渡しながら職員に話しかける。

もちろん「明日のフライトで」といういささか無理な条件も付け加える。

いぶかしげに申請書類と見比べる視線は、髭におおわれてはいるが表情は意外に若い。畳みかけるように、「三日後の日本対イランの試合が見たい」「VISAが用意できれば飛行機のチケットは何とかなる」「サッカーの試合を見るだけ」と、いくつかの短いフレーズを伝える。

そして最後に「あなたもサッカーが好きでしょう」とクロージングの決め台詞。

すると、なかなか読み取る事の難しい、彫りの深い顔立ちの表情が、一瞬なごんだような柔らかさを見せて、「即日発給は出来ないのだけれど」と言った後、「午後一時までに入金を完了する事」と言ってVISA発給手数料の振り込み用紙を手渡してくれた。

振り込み用紙の下には、午後のVISA発給時間の案内と窓口の説明書きが重ねられており。何とかするからといった髭面の表情の奥には、こちらが思った以上に若い瞳が微笑んでいた。

001午後の窓口で、「2-1でイラン」という予想スコアと共に返却されたパスポートのVISAには、“即日発給但し有効日数三日”と手書きで書き込まれ、通常とは異なる手順で発給された痕跡もうかがい知れる。

ともあれ、試合翌朝のフライトでとんぼ帰りというテヘランへの旅程が現実となった。(つづく)

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