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オフサイド・バックパッカーズ(14)

(4)

国旗とエアバスの模型の横に並ぶ、イスラム教の正月飾りディスプレーで、イラン航空のフランクフルト支店の所在はすぐに分かった。

123761808673516303551_nouruz3重いガラス戸を押し開いて支店の中に入ると、正面のカウンターの中で、いかにも手持無沙汰という感じで、書類の置く位置を、あれこれと試している男性社員がひとり。

イスラム美人のグランド・ホステスが応対という期待は、半ば休業に近い、支店窓口の雰囲気にあっさりと頓挫してしまったが、2ケ月に及んだ船旅で覚えた、中東地域共通の挨拶の言葉、「アッサラーム・アレイクム」と、カウンター越しに呼びかけてみる。

見知らぬ東洋人からの、イスラム伝統の挨拶に、少し戸惑ったようだが、男性社員が、「ワ・アレイクム・アッサラーム」と返してくれる。

だが、会話が続くのはここまで。イランで話されている言葉はペルシャ語であり、スエズ運河の寄港地ポートサイドで聞き覚えた、アラビア語とは、少々おもむきが異なっている。

もっとも、イランがペルシャ語文化圏なのだということも、朝になって目を通した、ガイドブックでようやく気付いた、と、いうようなあんばいだから、しかたがないと言えばしかたがない。

いつも通りの簡略な英語で、「テヘランまでのチケットをとって欲しい」と伝えると、「ご予定は?」と、ルーチンの応対への、「一人分、木曜日までに到着」というオーダーには、「満席!」と驚くほど早い反応で首を振った。

満席の理由を問うまでもなく、20年ほど前の日本の正月前と同じような、空席の多い、閑散とした事務所の出勤体制が、母国への里帰りの需要なのだと、答えている。

「キャンセル待ちも無理なのか」との問いにも、間髪を入れず首を振る。

どこかで読んだ旅行記の、満席の飛行機のキャビンアテンダント用ジャンプシートで無理やり搭乗したという話を思い浮かべながら、「どんな席でも良いから」と食い下がって、どうしてもテヘランへ行かなければならない理由を訴える。

そんなやりとりの、はずみで発した「フットボール」「アザディスタジアム」の単語に、間髪をいれず、「ワールドカップ最終予選か」と問いかえしてきた。

もちろん、大きく「ヤー!」とドイツ語で返すと、「イラン入国ビザは持っているのか」と問う。こちらには、「ナイン!」とハッキリ答え、今から総領事館で申請すると伝えた。

もちろん、そう容易にビザを得ることができないのは理解している。

たぶん、航空会社勤務なのだから、ビザ発給の事情も良く知っているのだろう。さきほど以上にハッキリと、「満席!!」と言い切った。そして、「午後5時までに、入国ビザを用意できたら何とかしてやる」と付け加えてくれた。

イスラム教の教義の中にも書き記された、年末年始の慈善活動とでもいうように、少しいたずらっぽく、遠めに放たれたスルーパスに、「追いついてみろ」とでもいうような提案を返してきた。(つづく)

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