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オフサイド・バックパッカーズ(6)

(3)

目的地が決まれば話は早い。当初の予定通り、オッフェンブルグのハウプトバーンホフ(中央駅)で、フランクフルト行きのインターシティ(都市間特急)に乗り換える。分岐駅のカールスルーエで途中下車、時刻表どおりに、ミュンヘン行きのインターシティに乗り継げれば、2時間ほどでシュトゥットガルトに着くはずだ。

ローカル電車の固いシートとは雲泥の差、上級列車の必要以上に柔らかく体を包み込むシートが、乗り継ぎ駅を忘れさせようと睡魔を運んでくる。

「やっぱり、久々の夜行列車はきつかったかな」

睡魔をなだめる為、早々と、ビュッフェに席を移すことになった。窓辺の座席に腰掛け、ガラス越しの田園風景を眺めながら、エスプレッソコーヒーをすする。

船旅での、時速20ノットという景色の流れと、ドイツ鉄道自慢の高速車両から眺める景色の、スピード感覚のギャップが、船を下りたと実感させ、最高時速が300キロ近い、とはいっても、最新テクノロジーの制振装置のおかげで、船ほども揺れないというのが、かえって奇妙な感覚でもあった。

程なく、インターシティはカールスルーエのプラットホームに滑り込んだ。次のインターシティとの5分ほどの乗り継ぎ時間を、ベンチに腰掛け、ミュンヘン行きの到着を待つ。

長距離路線専用乗り場の向かい側には、ローカル電車の車両が、乗り継ぎ待ちで停車中だった。

カールスルーエまで運んでくれたインターシティがホームを離れ、プラットホームに静寂が戻る。と、2等車両の中からの、男達の歌声がハッキリと聞き取れる。

朗々たる歌声だけではなく、ところどころで合いの手が加わる、世界中のサッカースタジアムでよく耳にするメロディと、揃いのユニフォームは、サッカーのサポーター集団のようであった。

昼前というにも、2時間以上は早い時間ではあるが、もうすでにビールの2、3本は空けてしまった、と、いう雰囲気の歌声の主に、ドイツ語と英語を交え、窓越しに声をかけてみる。

「これからサッカー観戦ですか」

「ああ、ミュンヘンの奴らに、仕返しさ」

どうやら、ドイツの2部リーグ、ツヴァイテリーガ所属のカールスルーエのサポーター達が、1860(アハツェーン ゼヒツィヒ)ミュンヘンとのアウェイゲームの応援に駆け付けるようだった。

「結構遠いけど、インターシティで行かないのですか」

「そんな金があるなら、ビールを買うさ」

どうやら、ローカル電車を乗り継ぐ、というより、ビール瓶を飲み倒しながら、敵地のミュンヘンに向かうという算段のようである。

「ミュンヘンとカールスルーエどっちが勝つ」

「そりゃ、俺達のチームに決まっているさ」

車内からの大きな歌声が、会話を遮った頃合いを見はかるかのように、ミュンヘン行きのインターシティがプラットホームに滑り込んできた。

「カールスルーエ!」と、よくある万国共通のコールと手拍子を彼らに投げかけ。閉まりかけたインターシティの扉の中に駆け込んだ。(つづく)

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