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オフサイド・バックパッカーズ(3)

(3)

港で、これからパリに向かうという大学生と相乗りしたタクシーは、マルセイユの鉄道駅を目指して、石畳のゴツゴツした感触を固いサスペンション越しに伝えつつ、すっかり暗くなった路地を進む。

車中で繰り返し聞かされた会話は、本来なら、次の寄港地のカナリヤ諸島までいくはずだったと、旅行を中途で諦めざるを得なくなった、港近くの市場でパスポートごとひったくられた鞄の話。

歳同様に未熟な旅行経験と、警戒心を疎かにさせる南欧の開放的な空気が、彼の旅程の大幅な短縮という結果をもたらした。パリの日本大使館でパスポートの再発行を待ち、そのまま帰国するという。

パスポートだけは無くしてはいけないという、言いつくされた旅行者への警鐘を再認識させられる事件でもある。

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かって旅行で滞在したことのある、パリの街並みの断片的な情報は提供出来るものの、5日後にテヘランのアザディスタジアムにたどり着くという日程では、彼の望むパリまでのエスコートは到底無理である。心細げな視線に、「なんとかなるよ」と根拠のない激励で、パリ行きのTGVへと送り込んだ。

〈さて、イランに行くにはどの街へ行くべきか・・・・・〉

夜半を過ぎ、すっかり人気の途絶えたコンコースで考えてみる。とはいっても、残された選択肢はさほど多くなく、30分後に出発するローマ行きの列車か、ストラスブールへ向かう夜行急行かを選ぶという二択。

学生時代に世界史の授業で学んだ、ドイツと中東は意外に密接な関係を持っているという事実に賭けてみようと、ドイツ国境に近い街への切符を窓口で受け取り、狭いとはいっても平らで寝返りもうてた、昨夜までの船室の2段ベッドとの違いにとまどいながらも、めいっぱいリクライニングさせた座席が、疲れた体を包み込んだ。  (つづく)

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